この世の中には、目に見えないことや科学的に実証できないことってありますよね?
私はその類の話が大好きです。現在それらの話はYouTubeなどで数多く配信されています。このみちは動画で配信されたものを観るのも好きですが、小説やマンガなど読むのも大好きです。
その中でもお勧めしたいマンガは漆原友紀の「蟲師」です。
このマンガはフィクションの世界で描かれているのですが、読後感じるのは、この世界は現実に存在しているのではないかと思わせるリアリティをもっていることでした。
読後になんとも言えない感情を与えてくれる、この不思議なマンガ「蟲師」をみてみましょう。
マンガ「蟲師」について
作者 漆原 友紀(うるしばら ゆき)
1999年に講談社『月刊アフタヌーン』の増刊号『アフタヌーンシーズン増刊』にて連載開始。2007年3月時点で累計部数は350万部を突破しています。
2003年に文化庁メディア芸術祭・漫画部門優秀賞。
2006年に第30回講談社漫画賞・一般部門受賞。
2007年には文化庁メディア芸術祭「日本のメディア芸術100選」マンガ部門選出。
2007年3月には、監督大友克洋、主演オダギリジョーによって実写映画化されました。
この作品は全11巻(本編10巻+特別編1巻)です。
それぞれの作品の注目ポイントをみてみましょう。
一巻
1,緑の座
2,柔らかい角
3,枕小路
4,瞼の光
5,旅をする沼
下等で不思議な動植物とは全く違う存在。人は昔から畏れを含みその存在を「蟲」(むし)とよびました。
その「蟲」たちに対して、主人公の「ギンコ」は旅をしながら「蟲師」(むしし)として対応するお話です。
はじめの方で主人公を紹介したりする作品は多いですが、この作品はすぐにストーリーがはじまります。
おすすめは、2話目の緑の座の話でしょうか。
ある少年が蟲師の「ギンコ」に調査を依頼することから始まります。
その少年は左手で絵を描くことによって、文字や絵などに生命を与えることができる能力をもっています。創造主といっても過言ではないでしょう。
なぜその少年はそのような力を持っているのか、1人で暮らしている少年の周囲に感じる、少年を守る不思議な存在は一体なんなのか?
「ギンコ」が謎をといていくことによって、互いの存在を知り、やっと繋がるべくして繋がった互いの縁。
読後の安堵感と共に、最後にはちゃっかりしている人間的な「ギンコ」の面白い部分を感じられる作品です。
二巻
1,やまねむる
2,筆の海
3,露を吸う群
4,雨がくる虹がたつ
5、綿胞子
おすすめは、2話目の「筆の海」です。
己の辛い運命にあらがうことなく、その人生を粛々と受け入れる強い少女の話です。
「ギンコ」に出会い、蟲の殺生以外の話を聞くことでギンコと仲良くなります。そしてその少女はギンコと話している時は、年相応の普通の女の子の顔をのぞかせてくれます。
この話の最後にみせる、自分の運命からの自由を願う彼女の言葉はとても重く寂しげなものでした。
作品自体明るいものではありませんが、人間の人生って諸行無常だなぁと思わせるものでした。
それは切なく、悲しいものを感じますが、不思議と納得し悲しみを感じさせますが、また読みたくなる作品でもありました。
三巻
1,錆の鳴く聲
2,海境より
3,重い実
4,硯に棲む白
5,眇の魚
3巻のおすすめの話は最終話の「眇の魚」の話で、主人公がギンコはどうして蟲師になったのか、なぜ片目になったのかを明らかにした話です。
畏れや(おそれや)
怒りに目を眩まされるな
みな
ただそれぞれが
あるようにあるだけ
漆原 友紀著「蟲師」3巻より
この部分は特に気になったところで、ギンコが別れの時に言われた言葉でした。ギンコ自身の人生を左右した言葉だったと思います。
その後の人生でのギンコは、人なり、蟲なりをあるがまま受け入れ結果がどうであれ、その時の自分が考えたベストで対処し生き続けていました。ギンコ自身が淡々とあるがままに。
人生において人の死など、受け入れざる負えない無常のものなどがあります。
それに対してあらがったことで上手くいかず、辛い思いをしたりすることなどは普通にあることです。
この作品はあらがうのではなく、そのままあるがままを受け入れることも人生なのだよと優しく伝えてくる作品だと思いました。
四巻
1,虚繭取り
2,一夜橋
3,春と嘯く
4,籠のなか
5,草を踏む音
全ての話がおすすめではあるのですが、2話目の話「一夜橋」が都市伝説的で面白いと思わせる作品でした。
ある村で想いあった男女が、夜中に駆け落ちをしようと吊り橋を渡ろうとします。
2人が吊り橋を渡る途中、女は自分たちだけが幸せになることに戸惑いだし、男が説得する中、吊り橋の一部が壊れ、女は谷に落下します。
女は死んだと思われましたが、村でいう「谷戻り」として帰ってきます。
「谷戻り」として帰ってきた女は抜け殻のようになって日々を過ごす中、その女の家族は、以前の娘に戻ってもらうようギンコに依頼することから話がはじまります。
ギンコは問題を把握するべく、女との駆け落ちに失敗し村八分にされた男ゼンに話を聞きます。
ゼンはその女のことを深く愛しており、女が抜け殻であろうが、その存在自体が自分の人生の支えであったと最後に知ります。
ラストはとても切なく、やりきれなさが残ります。
※谷戻りとは…谷に落ちて村に戻ってきた人が、心が喰われており、生前と違い生気がなく、谷に「一夜橋」がかかる夜、その人は完全に亡くなってしまうという言い伝えのことです。
五巻
1,沖つ宮
2,眼福眼禍
3,山抱く衣
4,篝野行
5,暁の蛇
おすすめの話は2話目の「眼福眼禍」です。
眼福という幻の蟲を眼にし、琵琶を弾きながら旅を行脚している女性の話です。
その女性の父も「蟲師」をしていて、その父から聞いた話を琵琶に乗せ話しつつ日銭を稼いでいました。
ギンコは旅の途中その女性の話に興味を持ち、その女性の眼の話をある条件つきで聞くことになるのですが、その条件とは「この両眼を山に埋めてきてほしい」とのことでした。
その女性は幼いころ盲目で、父がある日もたらした「眼福」という蟲によって目が見えたまでは良かったのですが、時間が経つにつれて、離れた場所の景色まで見通せる力をもつようになってしまい、生活に支障をきたすようになります。
そのため、眼をつぶる時だけ平穏なため、その女性は眼をつぶる時間を多く持つようになりました。
しかし、眼をつぶった状態の時でさえ、人の未来までみえてしまう千里眼をもつことになってしまいました。
しかし千里眼を持ったものの、唯一の肉親であった父親の死を予見できませんでした。
色々辛いことを経験したこの女性は、「眼福」という蟲によって「みえる」ことを手に入れたけれども、最終的には「みえる」ことを拒否します。
しかし「みえる」ことを失った彼女は、先がみえないことに喜びを感じました。
人のみえないものが、はじめのうちは「みえる」ことによって、人のためになったり、お金になったりなどいいことがありました。
しかし、周囲の人とあまりに違う力をもったことで、差別を受けたり、嫌なものを見せられる辛さなど、計り知れない苦労を背負うことにもなりました。
この作品は「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」といえる作品だなぁと思いました。
六巻
1,天辺の糸
2,囀る貝
3,夜を撫でる手
4,雪の下
5,野末の宴
おすすめの話は5話目の野末の宴です。
ある日の帰宅途中、酒造りを生業とする男が、道に迷った時に目にした宴で、口にした酒に感銘を受けました。
時は経ち、その男の息子も同じ仕事に就き、ある日の帰り道、若い頃の父が出会った宴を目にします。
その宴は蟲師たちの宴でした。
そこでその男の息子はギンコと知り合いになり、昔父が口にした黄金色の酒の正体を知ることになります。
黄金色の酒になりえなくとも、父の想いが息子に受け継がれ、それに近い酒を造ることができた息子の技量の高さを褒めたたえたいいお話だと思いました。
また、後半に少し面白い部分もあり、最後にはほっこりさせられる良い作品でした。
7巻
1,花惑い
2,鏡が淵
3,雷の袂
4,棘のみち(前編)
5、棘のみち(後編)
おすすめは4,5話の「棘のみち」です。
「結局のところその男は誰なのでしょう?」という話。
世の中の脅威になる蟲を封じこめる過酷な運命を背負わされた少女。
その少女の依頼で、同じような運命を負った一族の男の手伝いをすることになったギンコ。
ある廃村で蟲と生物の境界があいまいな場所を見つけ、その男と入り込み、巨大な蟲の集合体に出くわしギンコはピンチに陥ります。
そしてこの男も過酷な運命に翻弄される1人です。
しかし読み進めていくうちに、この男は幼い時の男が大きく成長したあるがままのものなのか、違うなら一体この男の中身は誰なのか?全く謎です。
何度も何度も読んでその謎を落とし込み、それぞれの読者の考え方で、この話を楽しんでみてはいかがでしょうか。
8巻
1,潮わく谷
2,冬の底
3,隠り江
4,日照る雨
5,泥の草
おすすめは第5話の「泥の草」です。
ある意味ホラーテイストな話で、やはり人は自分が1番かわいいのかという話。
憎しみは人を滅ぼすしかりですね。怒りや憎しみでは自分自身を救うことはできません。
状況によっては、自分を見失い、判断をあやまります。
この話はまさにドンピシャな話です。
しかし、その判断のあやまりにできる限り早く気づき、修正をかけることもまた大事なことです。
漫画は追体験できるものです。自分だったらどうするのかな?と思いながら読み進め、時に自分にとって引っかかる部分があれば立ち止まり考える。
楽しさだけでなく、時に儚く、時に不条理で、切ない、漫画って面白いものだなぁとつくづく感じました。
9巻
1,残り紅
2,風巻立つ
3,壷天の星
4,水碧む
5,草の茵
おすすめは5話目の「草の茵」です。
ギンコの少年期のお話で、まだギンコ自身が蟲師として確立されていない頃の話です。
まだ精神的に幼く、根無し草のようにあちこち当て所もなくフラフラその日暮らしをしています。
そんなある日、別の蟲師である男に助けてもらい、少しばかりその男のもとで世話になります。
ギンコはこの時自分の存在意義を見出せないでいる状態でした。
しかし、助けてもらった蟲師の男が放った言葉が、それからのギンコに影響を与えます。
「この世に居てはならない場所など誰にも無い」
「この世のすべてがお前の居るべき場所なんだ」
漆原友紀著「蟲師」第九巻
ギンコの心の中に深く深く言葉は刻まれたことでしょう。
その後のギンコの人生がそれを物語っています。
10巻
1,光の緒
2,常の樹
3,香る闇
4,鈴の雫(前編)
5,鈴の雫(後編)
おすすめは3話目の「香る闇」です。
ギンコが大雨で大変な時に、家に招きいれてくれ親切にしてくれた人のタイムループの話です。
ひょんなことから、その男はギンコにタイムループの話をし、それが蟲の仕業でよくないことだと知ります。
男はタイムループせず、この先の未来にいく選択をするのですが、その先に予期しないことが発生します。
この男の身になって考えると、もう一度タイムループしてしまう心情も十分理解できます。
しかしタイムループするということは、その辛さも繰り返しなのです。
一体どういう決断が望ましいのか、考えさせる作品です。
まとめ
漆原友紀さんのマンガ「蟲師」を紹介しました。
いかがでしたか?
興味をもった作品はありましたか?
「蟲師」は基本1話ごと完結した作品なので、この記事を読んで頂いて、気になった作品があれば途中の作品からでも構わずお読みいただけます。
全話どこかノスタルジックで、いくつかの話はハッピーエンドで終わらず、またいくつかの作品は無情さがあったりするなど、色々な味が何度でも楽しめる作品であるため読者を飽きさせません。
機会のある時に是非一度読んでみてください、そうすればこの作品「蟲師」の虜となることでしょう。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
このみち
参考サイト:ウィキペディア「蟲師」
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